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名古屋エスペラントセンターは、名古屋エスペラント会から引き継いだ書籍のほか、エスペランチストやそのご家族から寄贈された書籍を多数所蔵しています。蔵書の整理・分類作業にはまだ相当の時間を要すると思われますが、ここではそのうち興味深いものを適宜ご紹介していきたいと思います。まず今回紹介するのは、故竹中治助さんの蔵書であったもので、スターリン著、高木孝作訳『レーニン主義の基礎』(共生閣、昭和5年)という本です。時節柄、全編伏せ字だらけで、例えば「レーニン主義とは、帝國主義及びプロレタリア××の時代に於けるマルキシズムである。」といった具合ですが、その××の横に手書きで「革命」と記されています。
ところで、川崎さんはエスペランチストで、戦後の1954年には「東南アジア視察団に同行、エスペラントを活用」とあります。また、1972年からは、当時中国から刊行されていた全文エスペラント雑誌El Popola Ĉinio を購読しています(竹中さんがEl Popola Ĉinio のperantoをされていた縁で、上記『レーニン主義の基礎』が竹中さんに寄贈されることになったものでしょうか)。さらに「註」として、「エスペラントの学習開始は1930年前後で、プロレタリアエスペラント講座などによられたものと思われる(竹中)」と記されています。その根拠は特に明記されていませんが、同講座の刊行が1930年から翌31年にかけてですから、上記『レーニン主義の基礎』とまさに同時期です。竹中さんの推測どおりであれば、貴族院に勤務しつつ夜学で学んでいた若き官吏がプロレタリア エスペラント講座をひもときつつエスペラントを学ぶとともにスターリンの著作に親しんでいたわけで、時代の風潮がしのばれます。
『日本エスペラント運動人名事典』には川崎信助という名前は見当たらないようですが、竹中さんは上記のように几帳面に経歴を調べ(奥様からの聞き取りでしょうか)、記録として残しておられます。そこからは川崎信助氏の生涯とともに、竹中さんのエスペラントに対する熱意、さらには旧所有者への敬意も伝わってくるかのようです。なお、竹中蔵書については、さらに調査を進めて、後日その全貌をご紹介できればと思います。