担当:伊藤 俊彦
書物に熱い関心を持つ者にとって、自分の手で本を作り出版するというのは、大きな夢です。 とりわけエスペラントによる著作やエスペラントに関する著作は、商業ベースの出版・流通ルー トに乗りにくいだけに、その大多数が、篤志家の文字どおり手作りの作業によって出版されてき たといっても過言ではありません。 
名古屋エスペラントセンターでも、自分たちの手で出版活動を行いたいという気運が高まり、1 980年に名古屋エスペラントセンター出版会を設立しました。その後、多数の方々の財政的な 支援のもとに、出版活動を続けてきました。 刊行した出版物の数はわずかですが、特色ある著作を刊行し、エスペラント出版に新風を吹き込 んだものと自負しています。
このコーナーでは、これまでに出版会から刊行した本を紹介させていただきます。また、名古屋エスペラントセンターあるいは名古屋エスペラントセンター図書部名義で出版した本もあります。そうした本もあわせてご紹介します(以下、特に版元を明記していない場合は、出版会から刊行したものです)。 
近年、品切れが多く、また新刊の刊行が途絶えているのが残念です。再び特色ある出版活動を行いたいと考えています。 
- クロード・ピロン著、水野義明訳『エスペラント語の位置測定』
- 出版会の記念すべき処女   出版。エスペラントの言語構造を明快に分析した著作です。著者は異文化コミュニケーションの   研究者ですが、ヨハン・ヴァラーノの筆名による推理小説でも有名。 
訳者は明治大学教授で、エスペラントと国際共通語についての研究・翻訳で活躍されています。   1981年。品切。 
- シュテファン・マウル『ドイツ人ジャーナリストは語る』
- 当時、現役の新聞記者であり、   またエスペラント雑誌「モナート」の編集長でもあった著者が日本で行った4つの講演に邦訳を   付したもの。日本とドイツ、さらにはヨーロッパの現状をジャーナリストの目から鋭くえぐります。 本書は刊行当時、朝日新聞で高く評価されました。76ページ。   泉幸男、梅田善美、山川修一訳。カセットテープ別売。1981年。品切。 
- 『テンポ』復刻版 
- 1934年から40年までの「暗い谷間の時代」に、京都で刊行された全文エスペラントの雑誌です。エスペランティストの良心を示す、水準の高い文化誌。 
この雑誌を抜きにして、30年代の日本のエスペラント運動を語ることはできません。当時の編集長の野島安太郎氏による回想、『危険な言語』の著者ウルリッヒ・リンス氏の論文を収録。475ページ。1982年。定価9,800円。
 *参照− テンポの歴史的意義
- バルドゥル・ラグナルソン講演集『サガとザメンホフ』 
- アイスランドの詩人が来日時に行   った講演をまとめたもの。全文エスペラント。著者自身による吹き込みを収録したカセットテ   ープつき。1982年。品切。 
- いとうかんじ『顔のない仲間たち』 
- ザメンホフ全集の編者による、エスペラントとエスペランティストをめぐる裏話。 名古屋エスペラントセンター図書部より刊行。149ページ。1986年。1,500円。
- Unuaj Libroj por esperantistoj 
- エスペラントを発表した1887年から1888年に   かけてのザメンホフの著作を収録する。ザメンホフ全集の記念すべき第1巻の増補改訂版。 156ページ。1987年。名古屋エスペラントセンターより刊行。2,500円。
- Spomenka Ŝtimec『Aŭstralio』 
- クロアチアの女流作家スポメンカの掌編2編を収録。 14ページ。1988年。名古屋エスペラントセンター刊。
- ZAMENHOFA EKZEMPLARO 
- ザメンホフの著作から選んだ基本語彙について、その著作から多数の用例を収録した、画期的なエスペラントの語法と表現の辞典です。 本書は、編者である野村理   兵衛氏の半世紀以上にわたる営々たる努力の集大成であると同時に、出版会にとっても、10年近い大事業となりました。512ページ。1989年。8,900円。
- 角谷英則『エスペラント国探訪』 
- 北欧史を研究する著者が、1995年に文献収集のため訪れたベルギー、スウェーデン、ノルウェーで出会ったエスペランティストたちとの交流の記録。 1970年生まれの若い世代によるエスペラント探訪の記録です。1995年。名古屋エスペラントセンターより刊行。500円。
- Zamenhofaj Paroladoj
- CDで聴くザメンホフ演説集。川西徹郎吹き込み。CD3巻。2001年。名古屋エスペラントセンター刊。各巻1800円。
 2001年に名古屋エスペラントセンターが出版した三巻シリーズのCD集で、ザメンホフの演説のほぼすべてを朗読のかたちで収録しています。ザメンホフの演説は、これまで活字でしか残っておりませんでしたが、この演説集によってはじめて、ザメンホフの有名な演説を耳で聞くことができるようになりました。朗読者は、ザメンホフ研究家として名高い川西徹郎さんで、川西さんは諳んじられるほどにザメンホフの演説を熟知していることから、協力をお願いしました。
- Gon-vulpo kaj aliaj rakontoj
- 名古屋エスペラントセンターの最新刊。新美南吉作品集。筒井和幸訳。中谷省三挿絵。「ごんぎつね」「手袋を買いに」「牛をつないだ椿の木」「空気ポンプ」の4作品を収録。ハードカバー。第91回日本エスペラント大会記念出版。2004年。1500円。
このほか、歌集として、 Por Pli da Kantado 、La Granda Kantado の2冊が、   名古屋エスペラントセンターから刊行されています。後者については、プロの歌手による歌唱を収録したカセットテープも刊行。ただし、いずれも現在は品切れです。