行事案内・報告

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第30回愛知サマーセミナーの報告

山口眞一

昨年に引き続き、愛知サマーセミナーに、名古屋エスペラントセンターとして講座「国際語エスペラント」を出講するかたちで参加しました。

愛知サマーセミナーとは、愛知県内の私学関係者を中心に、教員、父母、生徒、市民がボランティアで毎年開催している、国内屈指の自由学校のことです。今年は2124講座、参加者は7万人近くあり、年々規模が拡大しています。

開催日は7月14・15・16日の三日間。場所は椙山学園(大学、高校、中学)およぼその周辺施設。エスペラントの講座はそのうち、14日の2回、椙山大学で開催しました(第1限9:30-10:50, 第4限14:50-16:10)。各回内容は同じ単発講座です。

分厚い講座一覧表には、次の案内文が掲載されています。

講座名「国際語エスペラント」:エスペラントは中立公平で学習容易な国際共通語です。エスペラントとはどんな言葉か、またこの言語を学ぶことで得られる知見や体験について、紹介をします。

講師は私(山口)が担当し、スタッフとして、永瀬、山田、鈴木、前田、堀田の委員各氏に教室設営や資材運搬などで助けていただきました。他に小川博仁、後藤みわこ、江崎雅康、佐藤順のみなさんに見学(サクラ参加)していただきました。

2回の講座を通じ、講師、スタッフおよびサクラも含む述べ参加者は28人。うち、高校生・専門学校生の受講は8人(同朋高校、東邦高校、岡崎城西高校など)。一般市民の受講も6人程ありました。昨年の受講者が少なかったせいなのか、割り当てられた教室が小さく、机が足りなくなるほど、想定以上に集まっていただきました。

今回、講師として私が心がけたことは、「語学としてのエスペラントを教える」のではなく、「国際語エスペラントの魅力をプレゼンテーションする」ということです。そのため、テキストは使わず、Keynote (Macintoshで使うプレゼンテーションソフトで、Windowsで使うPower Pointに相当)で作成したスライドを、プロジェクタで投影して講座をすすめていきました。このソフトは文字・図表だけでなく、音声や動画も扱うことができるので、これらの特性を生かして視聴覚にうったえる内容としました。また、高校生を相手にする、ということを極力意識して、内容を易しく、また関心をひくような題材 —SNSやボーカロイド、ことのはアムリラートなど— を取りあげることをこころがけました。


スライドの一例
スマホアプリAMIKUMU

実際の内容は次の5つの柱から。

  1. 国際語ってなんだ?
  2. 英語=国際語?
  3. エスペラントはどんな言葉?
  4. エスペラント使用の実際
  5. エスペラントの初歩を学ぼう

表紙なども含めたスライド枚数は合計で43枚。正味70分の授業のうち、1・2・3で15分、4で20分、5で30分と想定してリハーサルもしました(自室でぶつぶつと話しながら時間を計測するだけですが)。しかし実際には想定通りにはいかないものですね。やはり時間が足りなくなってしまい、最後の方は端折ってしまいました。内容をもう少し絞るべきだったと思います。このKeynoteで作成したファイルは、Power Point や一般の動画形式にも変換できますので、興味のある方には配布することができます。これを第1弾として、翌年以後すこしずつ内容や見せ方を工夫することでバージョンアップしたいと考えています。


受講者には最後にアンケートおよび感想文を提出してもらいました。アンケートはこちらが作成したものです。アンケートは17人分が回収され、学習経験があると答えた5人のうち4人は関係者、1人は「ことのはアムリラート」で学習した初心者でした。学習経験のない12人についてみると、5人は「エスペラントの存在じたいを知らなかった」と答え、講座内容については10人が「おもしろかった」、3人が「易しかった」と評価しました。その一方で、「国際語としてふさわしいのは?」の設問には英語とエスペラントとが拮抗する結果となりました。両方に○をつけて「理想はエスペラントだが現実は英語」とした意見がありました。これが大方の受けとめ方でしょうし、過度に英語を排撃することは得策ではないので、次回からは、「英語は実利をもつけれども、英語にはない利点がエスペラントにはある」ことをアピールできるとよいと思いました。また、今後の学習希望については2人が「続けて学びたい」、4人が「学びたいが時間がない」、4人が「将来学ぶかも知れない」と回答しました。受講生の多くが高校生であることを考慮すると、これは成果だと思います。連絡先をおしえてくれた2人に対しては、今後事情に配慮したフォローをすることを考えています。


最後に、高校生の感想文からのうちから4通をここに紹介します。

「正確にアメリカのこと伝えているけど今ではエスペラントは広まっていますが。今では実際に勉強しているだけど英語の変わりにエスペラント変えたほうが良い。言語差別をなくすためにもエスペラント語をぜひ広めてほしい。理由は僕がアメリカに5年間暮らしていたせいで日本語がうまく話せない。僕が話せる言葉は英語、フィリピン語が上手に話せるが日本語あまりうまくないのでエスペラントで言語差別をなくしてほしいです。」(原文ママ)(16歳男子)
「エスペラントのことは知ってはいたが、此処まで発達していたとは思っていなかった為、とても驚いた。特に、エスペラント語で歌が作られていることを知らずに、名前だけ、という感じだったので、とても嬉しかった。エスペラント語を話せるだけで無料で泊めてくれる民泊があるなど、実用的なことまで知ることができたと思う。又、ゲームや月刊誌などもあると知って、少し馴染みやすかった。思った以上に簡単で好感が持てた。学べて良かった。」(16歳女子)
「私は今回、国際語エスペラントの講座を受けるまでエスペラントを知りませんでした。私は国際語といったら英語だと思っていたし、何の疑問もありませんでした。しかし英語はイギリスの民族語で、英語が母国語の人たちと、英語が第二言語の人たちとは格差があり不公平であることを知りました。国際語エスペラントは英語よりも文法が簡単で書かれている字すべてを発音するというのもいいなと思いました。英語よりも簡単で世界中に話せる人がいて、エスペラントを話せれば無料でとまれる場所が確保できると考えるとエスペラントいいなと思いました。」(17歳女子)
「私はエスペラントという言葉が何なのか知らなくて、何だろう、と思って受講しました。私は、不規則だったり例外が多いので英語がすごく苦手です。英語が母語の国に生まれたかったなあ、と思っていました。でもエスペラントをたくさんの人が話せるようになればどこの世界の人とも話せるし、旅行も怖くないと思いました。私もエスペラントを話せるようになって海外へ行って色々と話してみたいと思いました。ちょっとエスペラントを知ることができて楽しかったです。」(18歳女子)

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